シャーマニック心理学協会 公式サイト

無意識とのつながりを取り戻して意識に統合する

 シャーマニズムというと,日本では青森のイタコや沖縄のユタのような,シャーマンが死者の霊を呼び寄せるなどの怪しげなイメージがあるかもしれませんが,そのような役割はシャーマンのごく一部です。その役割ひとつをとっても,シャーマニズムの背景にあるアニミズム(精霊信仰・自然信仰)という世界観のもとに行われてきた伝統を踏まえずに,現代的な価値観で見てしまうので怪しげなイメージが先行するように感じます。シャーマニズムが文化の中心にあった時代には,アニミズムが当たり前の価値観だったのです。死者の霊が存在するという世界観を持っている人々も日本には多く,繰り返し訪れるスピリチュアルブームなどを見ても,科学的な価値観だけでは割り切れないものに親和性を感じる人の心の働きがあるように思います。日本人のような長い歴史をもつ民族は,文化の根底に神道の起源でもあるアニミズムが連綿と受け継がれていますし,科学的な価値観というのはその歴史に比べればごく短いものです。それは,無意識を含む心の広大さに対して氷山の一角に例えられる,私達が自分だと認識している意識の領域の小ささにも通じます。

 シャーマニズムは,心理療法のルーツともされていて,アニミズムを背景とした癒しの技術と考えられます。精霊の力を借りたり,悪魔払いをしたりといった儀礼によって,個人やコミュニティの問題を解決に導いていました。対象が個人のこともありますが,むしろ個人を取り巻くコミュニティ全体の問題として捉えることが多いところを見ると,家族療法のシステム論などにも通じるものがあります。もう少し広くいえば,プロセスワーク(プロセス指向心理学)における共時性を基盤にした世界チャンネルやゴーストロールなどの考え方に近いとも言えるでしょう。心理療法のルーツとしては,シャーマニズムにおけるアニミズムという世界観の違いを踏まえないと,現代的な活用が難しくなりますが,共通点としては変性意識状態の活用があります。変性意識状態とは,起きながら夢を見ているような意識状態と言えますが,日常から離れた場で起こりやすくなります。コンサートやスポーツ観戦などの非日常の場で,人が変わったように日常とは違う行動を取ることがあるのもそのひとつです。心理療法の分野でも,変性意識状態が深いレベルの癒しや気づきに関与していることが指摘されています。また,この変性意識状態の活用を中心に置いて,現代的にシャーマニズムを復興しようとする流れが,ネオ・シャーマニズムと呼ばれます。シャーマニック心理学も,その流れに位置づけられると言っていいでしょう。

 ただし,ネオ・シャーマニズムの流れの多くが,非日常の体験に偏るあまり日常から遊離してしまい,現実逃避のような形でかりそめの至高体験や神秘体験を求めて各種のセミナーなどを渡り歩いたり,非日常体験の幻想の中に生きようとする人々を増やしていることに,当協会は強い危惧を抱いています。非日常で体験される無意識とつながった体験は,日常を忘れさせるような至高体験や神秘体験を含むので,多くの人は日常よりも非日常の体験の方に価値を置きがちです。一時的に日常を忘れることは,コンサートやスポーツ観戦の例のように心の健康を保ち日常を生きるために大切なものですが,強い変性意識状態における急激な非日常体験は依存性を引き起こしやすく,その体験は日常とつながらないまま,別世界のようにさえ体験されます。シャーマニズムの世界観であるアニミズムは,そのコミュニティである部族で共有される世界観であり,アニミズム的な世界観が日常そのものでした。「近代的自我」という表現もされるように,現代では自我の発達とともに意識の領域が明確になっていき,アニミズム的な世界観は大人になるにつれて無意識の奥に潜在してしまいます。意識と無意識の間には境界ができて,近代化とともに分離していきました。アニミズム的な世界観を基盤にもつネオ・シャーマニズムは本質的に無意識に親和性があるため,変性意識状態を活用して日常である意識の境界を越えて無意識にアプローチすると,その体験は日常とつなげることが難しくなります。シャーマニック心理学は,非日常の体験を日常につなげていき,原初的シャーマニズムの時代にはひとつだった無意識と意識を調和的に統合していくようなアプローチを提供していきます。また,無意識のメッセージとも言える気づきを日常で活かし,無意識の知恵を活用して日常をより豊かに生きることを実践することをサポートします。

 変性意識状態は,無意識とつながる体験を積み重ねてその感覚になじまないうちに深く入ると,夢を見ているときのように意識との解離が起こってしまいますが,変性意識状態の感覚に少しずつなじんでいくと,変性意識状態を無意識と意識の橋渡しのように活用することができるようになっていきます。そのためには,変性意識状態の感覚になじみながら無意識とつながり意識を伴わせて日常に活かすという実践を積み重ねることが必要です。無意識の知恵は,実際には意識に絶え間なくメッセージを送っているのですが,境界があるために意識はそのほとんどに気づかずに通り過ぎてしまいます。変性意識状態を使いこなせるようになると,無意識の知恵を活かして日常の困難を未然に防いだり,本来の自分が向かおうとしている方向性に導いてくれたり,日常をより豊かに生きられるようになります。セミナーなどでシャーマン役に導かれるままに一時的な至高体験や神秘体験に酔うよりも,あなた自身がシャーマンのように変性意識状態の活用を身につけて無意識とのつながりを強めていき,意識で行う思考ではとても考えつかないような深く豊かな知恵を活用するという実践を,一緒に進めていきましょう。